このお話は、もともと、完全非公開を前提にして書かれたもので、当初は四名ほどの方にのみ存在をお知らせしておりました。その後、「小姐拳闘倶楽部」のVIProomに収められていたものです。ですから、一般の閲覧者の方が目にするのは、「BIGETZZONE」になってからが初めてということになります。冒頭の部分にその痕跡が残っていますが、今回は、そのままの形で公開することにいたしました。
一応、断り書きらしきものを。
このショートストーリーは、
ごくごく一部の方にのみご賞味いただくことを目的として、
館主が完全な遊び心で書き下ろしたものです。
たまたまこのページをヒットしてしまった方、
ブラウザの「戻る」を使って、このページから離れてください。……
まあ、そうは言っても、
バカ正直に「了解でつ。」って言ってくれる人は少ないでしょうねぇ。
そこで、お願い。
うちのHPの「小説/読み物」のページに入り口がある、
「女園四峰」シリーズを読破してからということで、
ひとつよろしくお願いします。
別段、もったいぶっているというわけではなくて、ただ単に、
「ストーリーの背景が把握ができないだろうから」というのが理由です。
それから、このページのURLを館主本人が直接お知らせした、
『超VIP待遇のご招待客様』へ。
拙HP別館に、「潤子と百合のエッチな分岐続編」が収められていますが、
そちらをすでに読破されていらっしゃる方は、
そちらの内容に関して、一時的に、「なかったこと」にして、
今回ご披露する小品をお楽しみいただけるとよろしいかと思います。
それでは、能書き断り書きはここまでにして、
内緒のショートストーリー、「LOVE☆SPAR」、
心ゆくまでご堪能くださいませ。
舞台はアメリカ東部のとある街。
百合が世界タイトル初挑戦で無敗のチャンピオンをKOで下し、
新しい世界チャンピオンになった夜。
そこからこのストーリーはスタートします。
では、はじまり、はじまりぃ。
「ええーーっ!? ……」
百合に耳打ちされた潤子は、思わず大きな声を上げて、百合の口元から耳を引っ込め、百合の顔をまじまじと見つめた。
「ね。いいでしょ、潤子。…… ジュディには、もう許可もらってるから。……
ね、お願いっ。」
「…… う、…… うん。………… 私は、…… いいけど、……」
「じゃ、そうしよっ。…… やったぁー。」
「…… でも、すぐに用意できるかどうか、わかんないよ。……」
「だいじょぶ、だいじょぶ。鞠子さんだったら、絶対に何とかしてくれるって。」
「…… うーん、…… そうかなぁ。……」
「とにかく、すぐに頼んでみてよ。…… 潤子の口からの方が頼みやすいでしょ?」
「…… う、…… うん。………… わかった。……」
潤子は少し離れたところに置いてあるセカンドバッグを掴むと、パーティールームに設置されている電話の受話器を取り上げ、バッグから取り出したアドレス帳をめくり、ダイアルボタンを押し始めた。
百合がWLBFのチャンピオンベルトを手に入れた夜、試合会場からほど近いところにある、百合と百合のサポートチームが宿泊している小さなホテルで、祝勝パーティーが開かれていた。
支配人兼任のこのホテルのオーナーは、両手にVサインを作ってホテルに戻って来た百合に、キスの雨を降らせた。
「俺のホテルは、世界チャンピオンをゲストに招くことができたんだ。こんなに嬉しいことはない。今日は全部俺のオゴリだ。みんな、好きなだけ飲んでくれ!」
建物の中に一つだけあるパーティールームで彼はそう叫び、百合のチーフセコンドであるジュディに抱きついた。長い間女子ボクサー専門のトレーナーを務め上げ、ついに世界チャンピオンを育てることに成功したジュディも、ホテルのオーナーをきつく抱きしめ、涙をぼろぼろと流した。
パーティーが佳境を過ぎた頃、百合は潤子を部屋の隅に連れ出し、そっと耳打ちした。百合の話を聴いているうちに、潤子の顔には驚きの表情が広がっていった。百合が最後まで言いたいことを潤子に伝え終わったとき、潤子は「ええっ!?」と大きな声を上げ、世界チャンピオンとはとても思えない、無邪気な笑みを浮かべている百合の顔を見つめた。
試合の翌日、百合たちは、心の底から別れを惜しむホテルのオーナー兼支配人に手を振り、車で一時間ほどのところにある飛行場に向かった。そして、「試合に勝ったらラスベガスに寄って、話題になっている男子の世界タイトルマッチを見に行く」、という予定通りに、百合は、潤子とジュディ、もう一人のセコンドであるベッキーを伴ってラスベガスに入った。
お目当ての試合が行われる有名なホテルに着き、百合が潤子と一緒にカジノフロアを歩いていると、上品なジャケットに蝶ネクタイをした背の高い男性が二人に歩み寄り、百合に話しかけてきた。
「ユリ・クロカワ、やっぱりあなただったんだね。WLBF世界タイトル獲得おめでとう。お会いすることができて本当に嬉しいよ。私はこのホテルでカジノホストをしている。あなたの昨日の試合はテレビで見ていたよ。素晴らしいファイトだった。……
二日後にここで行われる試合を観に来たんだね。席はもう予約してるあるかい?」
カジノホストの質問に百合がまだだと答えると、彼はこう続けた。
「わかった。私がすぐに手配してあげる。連れのお嬢さんと二人分でかまわないだろうか。もちろん、VIP待遇で招待させていただくよ。現役の世界チャンピオンから入場料を取るなんて、ここはそんなケチなホテルじゃない。試合当日、会場のエントランスに来てもらうだけでいい。すく席に案内できるよう、手筈を整えておくよ。最高の席を用意するつもりだから、楽しみに待っていてくれ。」
彼はにっこり微笑んで百合に名刺を渡し、「ラスベガスに居る間、何か必要なものがあったら、まず私に連絡をくれないだろうか。私にできる限りの便宜を図るつもりだよ。私は今、このホテルのカジノホストとしてあなたと接してはいるが、仕事ではないプライベート面で、少しでもあなたと懇意になれることができたらと、私は心から願っている。」と言い残し、嬉しそうに百合たちの許を去っていった。
ふとしたことで手に入れることができた最上級の席での世界タイトルマッチ観戦、ホテルに隣接している巨大なショッピングモールでの楽しい買い物、潤子がスロットマシンで引き当てた一万ドル近いジャックポット、……
ラスベガスでの休日は、夢のように過ぎていった。
通い慣れたジムに戻ってきた百合は、すぐにトレーニングを開始した。園生の頃とは比較にならないほどの激しさで身体を苛めている百合を横目に、潤子は、慣れない英会話に苦労しながら、ジュディとベッキーのそばを離れず、トレーニング技術や選手の体調管理、用具管理について、できる限りの技術を会得しようと努力した。
潤子が日本に帰る前の日の夜、身体中びっしょりと汗まみれになったいた百合は、疲れ切った身体からジュディの構えるミットへ、必死の形相でパンチを伸ばしていた。それほど夜遅い時間ではないにもかかわらず、ジムエリアに残っているのは、百合とジュディ、二人だけだった。
この日の夜だけ、ジムのリングを、私と潤子だけのために使わせて欲しい。……
ジム開設以来、初めて世界タイトルを獲得した、百合のたっての望みとあって、ジムメイトたちは快くこれを受け入れ、早々にジムを後にしていた。
隣接しているロッカールームから、ベッキーに付き添われた潤子がジムエリアに姿を現した。ジムエリアに入ってきた潤子の姿にちらっと視線を遣ったジュディは、「ヒュー」と声を上げた。
間もなく、ジムエリアにブザーの音が鳴り響き、百合はジュディの構えているミットを打つ手を止め、赤コーナーのマットに前屈みに凭れ、荒い呼吸を繰り返した。
リングの上に潤子とベッキーが上がってきた。ベッキーは両手に抱えていた大きな段ボール箱をキャンバスの上に下ろし、クスクスと笑いながら百合に近づいた。そして、リングの内側に身体を向けた百合に、「今日のメニューが終わったらすぐに、って約束だったからね、ユリ。」と声をかけ、たっぷりと汗を吸って重くなっている黒いシャツを、百合の身体から剥がし始めた。
百合は、リングの真ん中にちょこんと立っている潤子に目を遣り、苦しそうな呼吸を繰り返しながら、にっこりと微笑んだ。潤子も百合の顔を見つめて微笑み返した。
百合が衣装変えを終えると、ベッキーは、最後までダンボール箱の中に残っていた黒いボクシンググローブを取り出し、その片方を百合の横に立っているジュディに手渡した。そして、ジュディとベッキーは手分けをして、バンデージをしたままの百合の両手に黒いグローブを装着し始めた。
潤子は、百合を柔らかい眼差しで見つめ、あまりの懐かしさに大きな溜息をついた。
祝勝会の席で百合にこう耳打ちされたとき、潤子は心臓が飛び出そうになるほど驚いた。
「ジムに戻ったら、私とスパーしよ。…… 私、『裏のリング』のときと同じ格好がいいな。……
潤子、鞠子さんに連絡して、あのときに使ったコスチューム、送ってくれるように頼んでくれないかな。」
潤子たちがラスベガスからジムに戻った日に、すでに鞠子からの荷物がジムに届けられていたことを知ったときにも、潤子は鞠子の対応の早さが信じられずにいた。
潤子がその段ボール箱の封を切ると、中には、『WLBF世界タイトル奪取、おめでとう。』と書かれた鞠子直筆のメッセージカードと一緒に、見覚えのある、黒とパールホワイトの十二オンスのボクシンググローブが一組ずつと、黒一色のものとパールホワイトトリム入りの白いショートトランクスが一枚ずつ入っていた。驚いたことに、潤子が在籍しているジムに置いてある、潤子の白いシューズまでもが同封されていた。
潤子はすでに、自分に割り当てられたリングコスチュームを身に付け終わり、形の良い大きな乳房を晒して、百合があの時と同じスタイルに変身し終わるのを待っていた。
潤子はグローブを固定するためのテーピングを終えようとしている百合に歩み寄り、まだ荒い呼吸を繰り返している百合の顔を覗き込んだ。
「百合ちゃん、トレーニング終わったばかりだけど、本当に大丈夫なの?」
「あのねぇ、潤子。私はこれでも世界チャンピオンなのよ。このくらいのハンディがなくっちゃ、面白くないじゃない。」
「そうか。…… そうだね。…… でも、園生の頃と同じで、遠慮はしないよ。」
「もちろん、そうじゃなくっちゃ。…… かなり疲れてるからっていうわけじゃないけど、私も全力で潤子に立ち向かう。それでいいのよね。」
「うん。」
潤子が百合に返事を返したとき、テーピングが終わった。百合は、五年振りに身につけた十二オンスのグローブの感触を確かめるように、何度かグローブ同士を軽く叩き合わせた。
「じゃ、始めよっ。…… ジュディ、ベッキー、手伝ってくれてありがとう。……
それからね、これは私と潤子だけのスパーだから、本当に危険だと思うまでは、私たちを放っておいてね。」
ベッキーは笑いながら、「それじゃ、ゆっくり見物させてもらうわ。」と言い残し、百合と潤子にマウスピースを咥えさせたあと、ジュディと一緒にリングを降りた。潤子が一度青コーナーに戻ったところで、ベッキーはリングから少し離れた位置に置いてあるゴングに、木槌を打ち付けた。
ノーインターバル制、時間無制限、どちらかが戦闘不能になるまで、という取り決めで、園生の頃から見ても一度も実現しなかった、潤子と百合、二人の初めてのスパーリングは始まった。
もちろん実力だけで考えれば、世界チャンピオンである百合の方が遥かに勝っていたが、一日の激しいトレーニングを終えたばかりで疲れ切っているということもあり、肩で大きく息をしながら、ゆっくりと赤コーナーを離れた百合にはあまり迫力は感じられなかった。
スパーが始まってしばらくの間は、ジャブを振りながら、百合との間合いを測っているような動きの潤子だったが、やがて激しく百合を攻め立てるようになった。足の動きが鈍い百合に対して、潤子は軽快なフットワークで百合に近づき、ボディから顔面へのコンビネーションブローを放ち、百合が反撃に出る前に百合のパンチのレンジから離れた。
五分ほどそんな闘い方を続けていた潤子は、ヒットアンドアウェイから接近戦へと戦法を変えてきた。パンチを放ったあと、百合から離れずに百合の反撃をガードし、一発打たれたらその場で二発、三発とパンチを返すようになった。短い間に仲良くなったベッキーからは、「ジュンコ、頑張れ!
チャンピオンなんかに負けるな!」と盛んに声援が飛んだ。
ベッキーの声援に後押しされ、潤子はさらに前に出ながら百合を激しく攻め、百合をロープ際に追い込んだ。力強いパンチを盛んに振ってくる潤子に対して、百合もアゴをガードするポジションに両腕を上げ、潤子の攻撃に耐えながら、ときおり放つ鋭いショートフックでこれに応戦した。
それでも二十発、三十発と潤子のボディブローを食らううちに、わずかに百合のガードは破綻し始めた。そしてついに、潤子の右ショートフックが百合のアゴをクリーンに捕らえた。不自然に腰を落とした百合の頬に、すぐさま潤子の左フックが叩き込まれた。
百合は膝を折り、キャンバスにお尻を落とした。
ジュディは慌てて百合の表情を追ったが、潤子にダウンを奪われている状況にもかかわらず、むしろ百合は嬉しそうな顔をしていたので、ジュディはそのままリングの上の二人を見守ることにした。
キャンバスに腰を落としている百合も、はあはあと大きな呼吸を繰り返しながらジュディに一瞬だけ顔を向け、「まだ大丈夫だから心配しないで。」という表情を作った。そして真剣な表情で自分を見下ろしている潤子に向かって、声をかけた。
「潤子、なかなかやるじゃない。まだ腕は落ちてないわね。」
世界チャンピオンからの賛辞に、潤子は思わず顔をほころばせた。
「もちろんまだ続けるわよ。このまま終わっちゃったら、世界チャンピオンとして、ちょっと恥ずかしいしね。」
三十秒ほどキャンバスに腰を下ろしていた百合は、そう言ってゆっくりと立ち上がった。
キャンバスに腰を下ろしているわずかの間に体力を回復したのか、百合の動きはいくぶん上向いた。逆に、激しく百合を攻め立てた潤子は、疲れから少しだけ動きが鈍ってきた。
やがて、ロープから少しだけ離れた場所で、二人は足を止めて打ち合った。百合が少しずつ劣勢を挽回していく様子は、二人の手数にも表れていた。スパーが始まった頃には五対一ぐらいの割合で潤子が百合を打ちまくっていたが、それが四対一から三対一へ、やがてその割合が二対一ぐらいにまでなったときには、見た目の印象はほぼ互角にまでなっていた。
世界チャンピオンにまで上り詰めた百合のパンチは、潤子が今までに経験したどのパンチよりも遥かに重く、その一発一発が潤子の戦闘力を大きく奪い去っていった。
手数の数が逆転するころになると、潤子の動きは止まり、完全に押され気味になってしまっていた。そして、百合のボディから顔面のコンビネーションブローが鮮やかにヒットし、潤子は腰から崩れ落ち、キャンバスに両手をついた。
潤子の目ははっきりと焦点を結び、ダウンを喫したパンチへのダメージが一時的なものであることを物語っていた。しかし、潤子の息遣いはすでに百合よりも荒いものに変わっていた。
潤子がダウンしてしまったのを見て、ベッキーはリングの上に飛び出そうかと言う衝動に駆られた。ベッキーが隣のジュディに目を遣ると、ジュディは「彼女たちはまだそれを望んでいない。もう少し待ちましょ。」と小声でベッキーに語りかけてきた。ベッキーはその場で小さく頷いて、再びリングの上の二人へと視線を向けた。
潤子は四つん這いになっていた体勢を、キャンバスにお尻を下ろして、百合を見上げるような形に変えた。二人は満足げな表情をお互いに向けていた。潤子がキャンバスに両手をついてから、百合がダウンしていたときと同じぐらいの時間がたったとき、潤子は口を開いた。
「やっぱり百合ちゃんは世界チャンピオンなんだね。もう私とは比べ物にならないくらい強いや。……
でも私、もうちょっとだけ頑張る。百合ちゃん、手を抜かないでね。」
百合がそれに応えて小さく頷くと、潤子は嬉しそうに微笑んで、ゆっくりと立ち上がった。
実力に勝る百合が一度優位に立ってしまうと、潤子にはそれを挽回することができなかった。潤子は必死に百合の攻撃に耐えていたが、ほどなくコーナーに追い詰められた。体重を預けて潤子をコーナーに押し込み、百合は、三発、四発と重いパンチを放った。潤子はたまらずクリンチに逃れた。
百合は、剥き出しの大きな乳房を突き出すようにして、再び潤子の身体をコーナーマットへ押し付けた。ぴったりと百合に身体を合わされた潤子の柔らかい乳房が大きく歪んだ。
百合は少しだけ身体を捻ってみた。わずかに乳首が擦れ合うと、潤子は思わず吐息を洩らした。百合は悪戯っぽく笑うと、さらに潤子の乳首を責めた。潤子の表情は切なさを帯び、小さな喘ぎ声まで洩れるようになった。
「潤子のおっぱい、相変わらず敏感なのね。」
潤子は何も答えなかったが、潤子の反応は、百合の言葉が間違いではないことを物語っていた。
百合はクリンチを解いて、リングの中央まで下がった。潤子は背にしていたコーナーマットから離れ、百合に歩み寄っていった。
潤子がコーナーから三、四歩離れたところで、百合は踏み込んで、潤子を射程圏内に捕らえ、再び潤子を激しく攻めた。顔へのフックをまともにもらってしまった潤子の口から、マウスピースがこぼれ落ちた。
このパンチで横によろめいた潤子に、百合は一気にラッシュをかけた。潤子はガードを固めたが、百合の重いパンチは、グローブの上からであるにもかかわらず、潤子に大きなダメージを与え続けた。
十発近い連打を浴びた潤子は、グローブで顔を覆ったまま、キャンバスに崩れ落ち、仰向けに横たわった。
しばらくじっとしていたあと、潤子は少しだけ立ち上がる素振りを見せたが、やがて四肢を投げ出すような格好で、べったりとキャンバスに背中をつけて、全身の力を抜いた。
百合がそんな潤子の様子に気付き、潤子のすぐ横にひざまずいて、「もう終わりにする?」と訪ねると、潤子はにっこりと微笑んで、「うん。」と答えた。
百合はマウスピースを外し、潤子の顔のそばで四つん這いになった。そして、穏やかな笑みを浮かべて、しばらく潤子の顔を見つめていたが、やがて、自分の顔を潤子に近づけ、少し切なそうな表情を潤子に向けた。
「潤子、…… 私のわがままに付き合ってくれて、ありがとう。……」
百合はそう言って、潤子の唇に軽くキスしたあと、潤子に頬擦りを始めた。
リングの外では、ロープに腕をかけて潤子と百合の様子を眺めていたベッキーの背後にジュディが回り、ベッキーの膨よかな乳房へと指を這わせ始めていた。ベッキーがジュディに少しとろんとした表情を向けると、ジュディはベッキーの唇に自分の唇を触れ合わせた。
ジュディとベッキーはリングの中にいる二人にもう一度視線を向け、二人に顔を向けた百合に、「私たちはこれで失礼するわ。」と目で合図を送り、寄り添い合うようにしてリングから離れ、ロッカールームへと消えていった。
ジムエリアに残されたのは、リングの上にいる潤子と百合、二人だけになった。百合は、キャンバスに投げ出されている潤子の身体の上に乗り、ぴったりと身体を重ね合わせた。そして、グローブを潤子の腕を押さえつけるような位置に置いて、再び潤子の唇を覆った。
潤子は目を閉じ、百合の唇の柔らかさを感じていた。潤子の頭の中には、たくさんのシーンが浮かんできていた。
…… 対抗戦のこと。…… 『裏のリング』のこと。…… 百合が、「アメリカに行って、世界チャンピオンを目指す」と言ったときのこと。……
百合が自分の目の前で大きな夢を実現したこと。……
「潤子、……」
少しだけ頭をもたげた百合が、潤子の名前を呼んだので、潤子は目を開いて、百合に「なぁに?」と言いたげな表情を向けた。百合はしばらく何も言わず潤子の顔を見つめていたが、やがて、切なそうに小さく口を開いた。
「……… 私、…… 潤子が好きよ。………… 愛してる。…………」
潤子も少しだけ切なそうな表情を作り、百合の言葉に答えた。
「……… 私も、百合ちゃんが好き。………」
百合は穏やかな笑顔を覗かせ、潤子の唇を覆った。
百合の唇は潤子の唇から離れ、潤子の丸みを帯びた身体のラインに沿って下っていった。頬から首筋、鎖骨の張り出しを抜けて、百合の唇と舌先は、桃色の突起を頂いた、まあるい大きな膨らみへと差し掛かってきた。
潤子には、百合が何をしようとしているのかを感じ取ることができた。潤子はほんの少しだけ身体を捩って抵抗したが、百合は潤子の腕を軽くグローブで押さえたまま、潤子の綺麗な乳首へと舌先を動かしていた。
やがて、百合の舌先が軽く潤子の乳首に触れると、潤子はぴくんと身体を震わせ、「あん…」と声を洩らした。
「…… 潤子、……… いっぱい愛してあげる。………」
百合は、少しの間だけ潤子の身体から舌先を離してそう言うと、半開きになった唇で潤子の乳首を口に含み、舌先で転がした。
「…… ぅああん、……」
潤子の口から、また切ない声が洩れた。
しばらくすると、百合の右手は潤子の腕を離れ、潤子の乳房へと動いた。百合はグローブを開いて潤子の乳房を覆い、さするように優しく動かした。
口の中に収まっている潤子の乳首がだんだん尖って行くさまを、百合は感じ取ることができた。百合の唇と舌先から伝わってくるねっとりとした快感と、グローブが擦り付けられることで伝わってくる無機質な刺激、敏感な乳首を違った感触で責められた潤子は、激しく身体を昂ぶらせた。
すでに潤子の下半身からは、熱い蜜が洩れ出ていた。乳首に刺激を受けるたびに、潤子の蜜はどんどん溢れ、トランクスの下に穿いている白いショーツを濡らし始めた。
このまま頂点を迎えてもいい。…… 潤子はそう感じていた。
潤子のまあるい大きな乳房から、百合の感触がすっと消えたので、潤子は閉じていた目を開け、百合の様子を窺ってみた。百合は両手のグローブの親指部分を、潤子の白いトランクスのベルトラインにかけようとしていた。
潤子は再び目を閉じ、身体の力を抜いた。やがて、想像していた通りに、潤子は、トランクスのベルトラインの窄まりが、腰から太股、膝からふくらはぎの辺りへと抜けていくのを感じた。潤子は『裏のリング』で紘美に敗れ、リング上でトランクスを失ったことはあるが、このとき潤子は失神していたので、実際にこの感覚を経験するのは初めてだった。
百合の手で、…… 愛する百合の手で、リングの上でコスチュームを脱がされる。……
潤子がその淫靡な情景を思い浮かべると、ショーツを濡らしている潤みは、ますます大きく広がった。最後には、潤子はトランクスの感触を片足の足首のあたりに残すだけになった。
ぴんぴんに尖り切った乳首へと、百合の舌と黒いグローブが戻ってきた。そして新たな快感が潤子の股間を這い始めると、潤子はその快感をねだるように、ほんの少しだけ腰を浮かせ、大きく股を開いた。百合の黒いグローブがショーツ越しに潤子の女性自身に触れると、潤子はだらしのない声を洩らし、荒く息を吐いた。
「…… 百合ちゃん、……… 百合ちゃん、………」
潤子は絶え間なく洩れる喘ぎ声の合間に、百合の名前を呼んだ。潤子の頂点は、すぐそこまで来ていた。相変わらず百合は、潤子の乳首と股間を愛撫し続けていた。
「あ、いく」
潤子の口からその言葉が出た数秒後、潤子の全身は痙攣し始めた。潤子がそれまで頭の上に投げ出していた腕を無意識に動かそうとすると、百合はそれを両手のグローブで押さえつけた。悦びの余韻の中で、潤子は唇同士が触れ合うのを感じた。潤子はその柔らかさを激しく求め、貪った。
潤子の不規則な身体の震えが収まりかけてきた。百合は潤子の身体の上に覆い被さったまま、少しだけ乳首をしこらせて、潤子が頂点からゆっくりと下りていくさまを感じていた。
やがて、潤子が身体を起き上がらせようとしたので、百合は潤子の身体の上から降り、身体を横向きにして潤子の様子を窺っていた。潤子は、百合に向かって少し嬉しそうに口を開いた。
「ありがとう、百合ちゃん。すごく気持ち良かった。……… じゃ、今度は私の番ね。」
百合は顔をほころばせ、キャンバスの上に仰向けになり、両腕を頭の上あたりに投げ出し、全身の力を抜いた。
この感覚、…… べったりと背中にキャンバスを感じるのは、『裏のリング』で潤子に負けたとき以来かな。……
こうして、リングの上で仰向けに寝転がり、全身の力を抜くっていうのは、結構気持ちのいいものなんだな、と百合は思った。……
でも、私は今、現役の世界チャンピオン。その私がこんな格好を気持ちいいと感じるのは、やっぱり問題あるんだろうな。……
そう思うと、少し可笑しかった。百合は、「うふっ」と小さな声を立てて笑った。
百合の身体の上に覆い被さろうとしていた潤子は、百合が可笑しそうに笑う姿を見て、不思議そうな顔をした。それに気付いた百合は、もう一度小さな声を上げて笑い、「何でもない。……
何でもないよ。」と答えた。
潤子は百合が笑った理由を知りたかったが、それよりも早く百合に触れたいという心情の方が勝っていた。潤子は百合の腕を両手の白いグローブで押さえつけ、百合の身体の上にぴったりと身体を重ね合わせた。そして、少しだけ顔を上げて百合の顔を見つめたあと、百合の唇を優しく覆った。
潤子に出会うことができなかったら、私はこんなに幸せな人生を送ることができなかった。……
潤子と出会い、潤子に負けたことで、私は人生の目標を見つけることができ、その結果、世界チャンピオンになるという大きな夢を実現することができた。……
……… 潤子は、私にとって、誰よりも大切な人。………
明日には、潤子はここを去り、日本へ帰っていってしまう。…… それならせめて、今夜だけは、ずうっと、……
ずうっと、こうしていたい。……
やがて潤子の唇は百合の唇を離れ、首筋の辺りを抜けて、百合の綺麗な、大きな乳房へと近づいていった。百合は幸せそうな表情を浮かべ、気持ち良さそうに深い呼吸を繰り返した。
百合の幸せそうな表情は、それを横目で見ていた潤子にも伝わった。潤子は嬉しそうに微笑んだあと、しこり始めた百合の乳首を口に含んだ。
潤子が舌先で百合の乳首を転がすと、百合はぴくりと身体を震わせ、少しだけ顔を顰めて、「あはあぁん……」という声を洩らした。
内緒のショートストーリー 「LOVE☆SPAR」本編 了
〜 おまけ 〜
もちろんこのあと、潤子と百合は、超長距離恋愛の熱愛カップルになりました。
潤子は、百合が世界戦を行うたびに、セコンドを務めるために渡米しました。そして、試合が終わってから日本に戻るまでの短い間、潤子は百合と寝食を共にし、エッチでラブラブな時間を過ごすのでした。
デビュー以来からの連続KO勝ち記録を更新し続け、これから円熟の域に入らんとしていた百合が突然現役を引退した理由は、どうやら、「潤子と離れて暮らすことに耐えられなくなったから」、だったようです。
百合は引退後に女性専門のボクシングジムを開きます。百合がオーナー、潤子がチーフトレーナーという形で、二人は協力して百合のジムを運営していくことになるのですが、その傍ら、潤子と百合はジムのすぐ近くに愛の巣を構え、仲睦まじく、そしてエッチく暮らしたということです。めでたし、めでたし。
おまけのおまけ。
百合がWLBFのチャンピオンベルトを保持している間に、とあるボクシングの専門誌に百合の特集記事が載りました。取材インタビューに先立って、一問一答形式の定型質問シートを渡された百合は、自分で回答欄を記入していきました。その中に、「あなたの好物は何ですか?」という問いがあったのですが、一番最初に百合の頭に浮かんだ答えは、『潤子のおっぱい』だったということです。 おしまい。