この物語は、ある中堅都市にある、凛花(りんか)女子学園、盛華館(せいがかん)女子園、雅ヶ丘(みやびがおか)女学園、若草山(わかくさやま)女子学園の、四つの女子校が舞台になっている。
この四園は、いずれも四年全寮制であること、「心身ともに強く、健康な女性を世に送り出すこと」を校是にしていることなど、似通っている部分が多く、いい意味でのライバル関係にある。また、いずれの園も、学業だけでなく、言葉遣いや身のこなしなど、躾に関わる部分も厳しく園生に叩き込むため、卒園生の評判も非常に良く、四園を総称して「女園四峰」と呼ばれるほどの、国内でもトップクラスの名門人気校であり、入園志願者が日本全国から集まってくる。
スポーツ関連の部活動は、校是で「健康な」と謳われているように、各園で盛んに行われていて、ボクシングに関しても、文科系活動との掛け持ちで汗を流すことが目的の園生から、完全な競技指向でボクシングに打ち込む園生までを含め、ボクシング部として、各園ともに活動を行っている。
運動部同士も、定期的に対抗試合などを行って交流を深め合っている。ボクシング部に関しては、七月、十一月、三月の年三回、五〜七日間の日程で、『学園対抗戦』を開催している。
『対抗戦』は、公式の試合として他園生同士がグローブを交える唯一の機会であり、競技指向の部員にとって、大きな節目となっている。試合に出場する選手は、それぞれスクールカラーに染められたリングコスチュームを身に纏い、選手個人たけでなく、母園の名誉を賭けて、力の限り闘う。対抗戦で勝者となり、リングの上でレフェリーにグローブを掲げ挙げられることは、選手にとって最高の栄誉となる。また、敗れても、最後まで立派に闘う姿には惜しみない賞賛が送られる。
年に三回ある『対抗戦』のうち、十一月に開かれる秋季対抗戦は、他の七月(夏季)、三月(学年末)のものとは違った、特別な意味合いがある。一年生が一斉にデビュー戦を迎えること(夏季対抗戦には一年生が出場できないという規定があるため)、四年生にとっては、園生として最後の公式戦の場であること、そして何より、年に一度、競技指向の部員にとって最大の目標である、階級別のチャンピオンが選ばれることが挙げられる。階級別チャンピオンは、それぞれの園から選ばれた各階級の代表選手一名、計四名のトーナメントで争う。七日間の日程の初日に準決勝に当たる試合が、そして最終日には、卒園生同士のエキジビションマッチの後に決勝戦が組まれる。閉会式で優勝者に記念のメダルが手渡され、秋季大会は幕を閉じる。
競技選手登録をしている者は、月に二回、身体計測および検診を受け、その結果を事務局に提出しなければならない。
競技選手の身長と体重のバランスを正常な範囲に保つため、各階級には、必要に応じて身長の下限と上限を、リミットレス級については身長と体重の相関係数の制限を設ける。
試合直前の過度の減量を防止するため、競技選手登録をしている者は、身体測定時に登録階級のリミット超3ポンドを上限として、体重を維持する義務を負う。また、二度連続してこの条件を満たせなかった者は、自動的に重量側に登録を変更される。
登録階級を軽量側へ変更した者は、変更登録後に三度の身体測定結果が提出されるまで、試合出場資格を停止する。